東証、原因究明急ぐ=専門家「管理甘い」―取引正常化に安堵感 2020年10月02日

 東京証券取引所は2日、前日に終日停止した全銘柄の株式売買を再開し、市場はひとまず正常化した。大きな混乱はなく、関係者の間に安堵(あんど)感が広がった。しかし、システム障害の再発防止策を講じるためにも、原因究明は急務。専門家からは管理体制の甘さを指摘する声が上がっている。
 2日午前9時の取引開始を「固唾をのんで見守った」というインターネット証券関係者は、静かな売買の始まりに胸をなで下ろした。ただ、同社のシステム部門は取引再開に向けた調整のため徹夜で作業。顧客からの問い合わせも普段より多く、2日に予定していた取引内容の訂正や取り消しの要望が目立ったという。
 東証は故障した株式売買システム「アローヘッド」を納入した富士通と原因究明を続けた。故障したのはアローヘッドの多数のサーバーが共有する情報の記録装置。何らかの理由でバックアップ装置も稼働せず、売買情報配信システムに異常が生じ、東証は終日取引停止という苦渋の判断を余儀なくされた。
 障害が発生した1日、途中で再起動して取引を再開すれば既に注文を受けた顧客のデータが消えて混乱を招く恐れがあった。このため、終日停止は「難しい判断だが、賢明だった」(フィンテック協会アドバイザーの沖田貴史氏)と、東証の対応に一定の理解を示す声がある。
 しかし、専門家からは厳しい批判も相次ぐ。金融機関のIT戦略に詳しい専門家は「数段階のバックアップ策が用意されるのが金融系システムでは当然で、対策の不備は明らかだ」と問題視する。
 元日本IBMシステムエンジニアで日本大学危機管理学部の美濃輪正行教授は、再発防止策として「システムなどの細かな変更のたびにテストを繰り返すことや、バックアップ体制の精緻な設計が必要だ」と指摘している。 

その他の写真

取引が再開し、日経平均株価の終値などを示す電光ボード=2日午後、東京都中央区の東京証券取引所
取引が再開し、日経平均株価の終値などを示す電光ボード=2日午後、東京都中央区の東京証券取引所

特集、解説記事