景況感の回復緩慢=悪化歯止めも先行き懸念―9月短観 2020年10月01日

 日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス27と、前回6月調査から7ポイント上昇した。2017年12月以来、2年9カ月ぶりの改善となり、新型コロナウイルス感染拡大による景況感の悪化にひとまず歯止めがかかった形だ。ただ、依然として大幅なマイナス水準が続いており、回復ペースは緩慢だ。
 業況判断指数は、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を差し引いた値。大企業では、非製造業もマイナス12と5ポイント改善した。国内外での経済活動再開に伴って輸出や生産が回復。業種別では、前回調査で11年ぶりの低水準に落ち込んだ「自動車」がマイナス61と11ポイント改善。過去最悪だった「宿泊・飲食サービス」もマイナス87と、なお厳しい状況ながら4ポイント上昇した。
 しかし、製造業でマイナス24前後、非製造業でマイナス9前後としていた市場予想には届かなかった。市場では「ワクチンや治療薬が開発されていない状況では、国民の自粛ムードが解消するのは困難。回復ペースはおのずと緩やかなものにならざるを得ない」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)との指摘が聞かれた。
 先行きも、非製造業では、大企業が1ポイントの改善と回復ペースが減速、中小企業はマイナス27と5ポイントの悪化を見込む。これまで好調だった「巣ごもり需要」やテレワーク需要の一巡を見越し、小売りや情報サービスで先行き懸念が強まった。 

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