アベノミクス、株価2.3倍=成長力底上げ、新政権の課題 2020年09月16日

 第2次安倍政権は、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」を掲げ、日本経済の再生を目指した。円安・株高を演出し、在任中の日経平均株価は約2.3倍の上昇を見せ、2000年以降発足の歴代政権では突出する。しかし、規制緩和や構造改革を通じた成長力の底上げは不十分なままで、低成長からの脱却は新政権の課題となる。
 12年12月に政権に返り咲いた安倍晋三前首相が「強い経済を取り戻す」と表明し、始動させたアベノミクス。日銀の「異次元の金融緩和」で巨額マネーを供給し、政権発足時に1万0230円だった日経平均は18年10月に2万4270円の高値を付けた。在任中の上昇率は小泉純一郎政権の11.3%を大きく上回る。円安を追い風に最高益を記録する企業が相次ぎ、民間の内部留保(金融機関除く)は12年度の304兆円から18年度には463兆円に積み上がった。
 雇用情勢も改善し、12年12月に4.3%だった完全失業率は19年11月には2.2%まで低下。安倍氏は8月の辞任表明記者会見で「20年続いたデフレに3本の矢で挑み、400万人を超える雇用をつくり出すことができた」と実績を強調した。
 安倍政権下での景気拡大は71カ月と戦後2番目の長さ。ただ、実質GDP(国内総生産)成長率は年平均1.1%にとどまる。好調な企業収益が賃上げに回って個人消費が活性化する「経済の好循環」を実現できなかったためだ。実質成長率は17年に2.2%まで高まったものの、19年は0.7%に失速した。
 低成長を打破する成長戦略は掛け声倒れに終わり、経済の実力を示す潜在成長率は1%を割ったまま。スイスのビジネススクールIMDの世界競争力ランキングで日本は12年の27位から20年には34位へ後退した。
 一方、景気刺激のため経済対策が繰り返され、財政は一段と悪化した。新型コロナウイルス感染症対策の巨額支出も加わり、12年度末に705兆円だった国債発行残高は、20年度末には964兆円に膨らむ見通しだ。
 菅義偉新首相にとって、コロナ禍で低迷する経済の立て直しが急務だが「財政再建の道筋を描き直すことも必要不可欠」(第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト)と指摘されている。 

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