スマホ決済拡大に冷や水=携帯4社の競争激化―ドコモ口座問題 2020年09月11日

 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を使って預金が不正に引き出された問題で、携帯電話各社のスマートフォン決済サービスの拡大に影響が出そうだ。携帯電話市場が飽和状態となる中、競争が激化。成長分野として各社とも注力してきただけに、冷や水を浴びせられた格好だ。
 「事業展開に一定の影響が出るのは避けられない」。ドコモの丸山誠治副社長は10日の記者会見で、ドコモ口座にひも付いた決済サービス「d払い」の信用失墜に懸念を示した。同社は2018年に発表した中期経営計画で、金融サービスなどの非通信事業領域を強化する方針を打ち出し、大規模な還元キャンペーンを展開して会員数増加に取り組んできた。しかし今回の問題で、ドコモが事業拡大を優先し、安全性確保の対策が甘かったことが明らかになり、勢いが鈍るのは不可避だ。
 ドコモが会員獲得に躍起になった背景には、携帯各社のスマホ決済サービスの競争激化がある。ソフトバンクの「ペイペイ」は、18年から「100億円」還元キャンペーンを行い会員数を伸ばした。KDDI(au)の「auペイ」はローソンなどで使える共通ポイント「Ponta(ポンタ)」と連携し加盟店が増加。楽天モバイルも通販サイト大手「楽天市場」で使えるポイントがたまる「楽天ペイ」で攻勢を掛ける。
 ドコモは携帯電話シェアトップの強みを生かし、自社回線利用者を中心に顧客開拓を進めてきた。ただ、他社との連携で後れを取り、競合他社に利用店舗数で引き離された。焦るドコモは口座開設の要件を緩め、不正利用の原因を生んだ。
 成長分野のスマホ決済には金融以外のさまざまな業種が参入。1年前にはセブン&アイ・ホールディングスの「セブンペイ」がサービス開始直後に不正利用で廃止に追い込まれた。事業拡大ばかりでなく、顧客保護に真摯(しんし)に取り組むことが求められている。 

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