アベノミクス、継承か修正か=格差是正、経済再生で論戦―自民総裁選 2020年09月11日

 自民党総裁選では、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」への評価が争点の一つになる。本命視される菅義偉官房長官は路線継承を前面に打ち出すが、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長は格差是正の重要性などを主張。新型コロナウイルスの影響で企業活動が縮小する中、経済立て直しへ3氏が論戦を繰り広げている。
 ◇菅氏は成果誇示
 アベノミクスは、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を駆使してデフレ脱却と豊かさを実感できる社会を目指す政策だ。円安・株高や企業収益の回復、雇用情勢改善につながり、成果があった点では3氏は一致している。
 政権を中枢で支えた菅氏は、「バブル崩壊後で最高の経済状態を実現した」と成果を誇示し、「責任を持って(アベノミクスを)引き継ぐ」と強調。コロナ禍の打撃を克服するため「必要なら金融政策をさらに進める」と日銀に追加緩和を促す可能性にも言及した。
 岸田氏は、金融・財政政策については「いきなり変えると弊害が出る」と指摘する。ただ、「数年先には財政健全化や金利についてもしっかり考えていく」と財政規律への配慮も示す。石破氏は「金融政策を突然変えるつもりはない」とする一方、大規模緩和による市場機能への悪影響に懸念を示し、「いつまでも今のままという話にはならない」としている。
 ◇積み残した課題
 アベノミクスが積み残した課題への対応も論戦の焦点となる。岸田氏は「中小企業や地方は成長の果実を実感しておらず、格差是正が必要」と指摘。最低賃金の引き上げや、教育費・住宅費負担の軽減に力を入れる考えだ。
 石破氏も「低所得者の所得を増やしていきたい」と格差解消を重視している。「消費税の果たすべき役割をもう一度検証する」として、所得が低い人ほど税負担が重くなる逆進性の緩和にも意欲を表明。具体策としては「納税猶予、税の減免、現金給付などいろいろなやり方がある」と語り、「(税率引き下げに)決め打ちしているわけではない」と説明している。
 規制緩和や技術革新で経済の実力を底上げする成長戦略は、安倍政権下では不発だったとの指摘が多い。岸田氏は「『3本目の矢』を思い切って進めないと経済の持続可能性は維持できない」として、ビッグデータなどの最新技術活用を盛り込んだ成長戦略の必要性を訴える。
 菅氏は「既得権益を取り払い、規制改革を全力で進める」と強調。携帯電話事業者の競争を加速させ、通信料金の引き下げにつなげる考えを示す。また「将来的には地方銀行は数が多過ぎる」として、地銀の再編を後押しする構えも見せている。 

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