ドコモ口座の新規登録停止=不正利用拡大で―安全対策の甘さ露呈 2020年09月09日

 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を使った不正な預金の引き出しが9日、ゆうちょ銀行でも確認されるなど、地方銀行を中心に不正利用の被害が相次いでいる。ドコモ口座はメールアドレスさえあれば架空名義でも開設が可能で、こうしたセキュリティー対策の甘さが露呈した格好だ。事態の拡大を受けドコモは10日未明からドコモ口座の新規登録を一斉に停止。本格的な対応に乗り出す。
 キャッシュレス決済の普及が進む中、不正利用を防ぐ一段の取り組みが求められている。
 金融庁は9日、銀行とドコモに被害者補償の徹底を求めた上で、原因究明と再発防止を指示。ドコモは「本人確認を徹底し不審な金の出入りの監視も強化する」とし、携帯電話番号や運転免許証など本人確認書類の登録を義務化すると発表した。
 これまでに預金の不正引き出しが確認されたのは、ゆうちょ銀行(東京)、イオン銀行(同)、七十七銀行(仙台市)、中国銀行(岡山市)、東邦銀行(福島市)、滋賀銀行(大津市)、鳥取銀行(鳥取市)、大垣共立銀行(岐阜県大垣市)、紀陽銀行(和歌山市)、みちのく銀行(青森市)の10行。宮城県警関係者によると、9日までに七十七銀の預金者約20人から相談が寄せられており、被害金額は最大で1人当たり60万円、被害総額は数百万円規模に上るという。今後の被害拡大を防ぐため、これらを含む20行が同日夜までにドコモ口座への新規口座登録の停止を決めており、七十七銀は既存口座のチャージ(入金)も停止した。
 ドコモ口座は、銀行口座を登録してチャージすることで、スマートフォンで送金や買い物ができるサービス。口座開設時の本人確認はメールアドレスのみで行う仕組みで、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)などを使った認証は導入していない。業界関係者は「ペイペイなど他の決済サービスに比べてなりすましに悪用されやすい」と指摘する。
 今回の不正では、銀行預金者の名義や口座番号、暗証番号が何らかの方法で盗まれ、第三者がなりすましてドコモ口座を開設。これに銀行口座を登録して、お金を不正に引き出したとみられる。 

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