米価6年ぶり下落も=コロナで需要減、在庫多く―20年産 2020年08月30日

 秋に本格的な収穫を迎える新米の卸値が、6年ぶりに下落する可能性が高まっている。人口減少や消費者のコメ離れに歯止めがかからない上、今年は新型コロナウイルス流行による外食需要の減少が追い打ちを掛けている。消費者にとっては家計が助かる一方、農家には頭の痛い問題だ。
 卸値は、農協など出荷業者と卸売業者の相対取引価格のこと。
 農林水産省は26日、2020年産米の用途を飼料用など主食用以外に変更する期限を8月末から9月18日に再延長した。米価の高止まりで変更が進んでいないためだ。農水省は、手厚い補助金を得られる飼料用などへの転換を促し、需給の引き締めを狙っている。
 全国農業協同組合中央会の馬場利彦専務理事は「需給緩和の懸念がある。予期せぬコロナの影響で厳しい状況だ」と危機感を強める。
 農水省によると、19年7月~20年6月の需要は、その前の年に比べ22万トン少ない713万トン(速報値)。従来の減少ペースは年10万トン程度だった。昨年の消費税増税でコメの税率は据え置かれたが、家庭の節約志向が高まり、コロナの影響も加わって減少幅が一気に拡大した。
 この結果、今年6月末時点の在庫は前年より12万トン多い201万トン(同)。200万トンを超えると米価が下落するとされる。7月以降もコロナによる外食自粛は続いており、在庫はさらに積み上がる懸念がある。
 政府は18年産からコメの生産調整(減反)をやめ、農家は自由に作付けできるようになった。過剰な作付けは値崩れを招くが、今年も東北のコメどころを含む25都府県が、6月末時点で作付面積を前年並みとするなど「作れば高く売れるという意識が農家に染みついている」(農水省幹部)。
 農水省が28日に発表した作柄概況(15日時点)は、早場米産地19道県のうち、北海道など13道県が「やや良」か「平年並み」。他県産に先駆けて販売が始まった宮崎県産コシヒカリの小売価格は前年より安めになっている。 

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