「大盤振る舞い」財源不安=増税に成長リスク―バイデン氏 2020年08月21日

 【ワシントン時事】米民主党の大統領候補に決まったバイデン前副大統領が主張する政策は、大型環境投資、手厚い社会保障や格差是正策など、財政的な「大盤振る舞い」の印象が強い。新型コロナウイルス経済対策で政府債務は既に歴史的な高水準。バイデン氏は財源を法人税などの増税で賄う考えだが、成長の足かせになるリスクをはらむ。
 「気候変動は危機ではなく数百万の雇用を創出する好機だ」。バイデン氏は20日受諾演説し、4年間で2兆ドル(約212兆円)の温暖化対策に意欲を示した。このほか政策提案には、高齢者や子育て世帯支援の7750億ドルなど巨額の財政出動策がずらりと並ぶ。
 バイデン氏は「上位1%の富裕層、高収益企業への減税をやめることで資金は賄える」と強調。トランプ政権下の税制改革で21%に下がった連邦法人税率を28%へ引き上げ、富裕層への課税強化も視野に入れる。民間シンクタンクはバイデン氏が大統領となれば、今後10年間の税収増が3兆4000億~3兆7000億ドルに上るとはじく。
 民主党内では、医療保険制度の拡充や大規模な温暖化対策「グリーンニューディール」を主張する急進左派の存在感が増している。大型公共政策をさらに求める声が強まりかねない。
 これに対し、トランプ大統領は追加減税を明言。バイデン政権になれば「米史上最大の増税で1929年の大恐慌が再来する」とあおる。バイデン氏の主張に財源不足の懸念がつきまとえば、トランプ氏にさらなる攻撃の隙を与えかねない。
 新型コロナ経済対策は約3兆ドルに上り、2020会計年度の財政赤字と連邦債務残高の国内総生産(GDP)比はともに戦後最悪の水準に達する可能性が高い。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「予想外の経済的打撃には十分な財政余力が必要」と懸念を示す。
 民間シンクタンクのタックス・ファンデーションは、バイデン氏が提唱する増税を実現した場合、GDPが長期的に1.5%押し下げられると試算する。増税による大型公共事業が経済押し上げにつながると有権者を納得させられるかどうかが、バイデン氏の選挙戦のカギを握る。 

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