自社株M&Aに税制優遇検討=手元資金なしで再編促進―政府 2020年08月20日

 政府は2021年度税制改正で、自社株を使った企業の合併・買収(M&A)を行った際の税制優遇を拡大する方向で検討に入った。人工知能(AI)などの先進的なデジタル技術を持つ企業が、十分に手元資金がなくても大胆な事業再編をしやすくするのが狙い。新型コロナウイルスの感染拡大により企業の経営環境が急速に悪化する中、税制面から技術革新を後押しすることを目指す。
 経済産業省が9月にまとめる21年度税制改正要望に盛り込む方向で調整しており、与党が年末に向けて行う税制改正作業で、本格的な議論が行われる見通しだ。
 自社株M&Aを受けて株式を譲り受けた側には、その利益に対する納税義務が生じる。現在の制度では、株式の譲渡益への課税繰り延べが認められるが、産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」に認定されることが要件。経産省は、この要件自体を不要とすることも含め、株式譲渡の際に新たな税制優遇措置を講じるよう検討を求める方向だ。
 自社株M&Aは、高い技術力を持つベンチャー企業や、成長が期待される大企業の子会社などの組み合わせを想定。例えば、買い手企業のA社がB社を買収する際、現金ではなくA社の株式をB社の株主に渡す形で行う。手元に現金を持たなくても自社株で買収を行えるため、資金に余裕はないものの、将来の成長が期待される企業にとって大きな利点がある。 

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