銀行、送金料下げ本腰=決済業者の参加検討―新インフラ整備も 2020年08月18日

 銀行業界が送金手数料の引き下げへ本腰を入れ始めた。40年以上も変わらず高止まりし、キャッシュレス決済が広がらない要因とされる。銀行以外の決済業者を既存の銀行間取引システムに参加させたり、新たな送金インフラを整備したりする動きが出ている。利用客の負担軽減も期待される。
 全国の預金取扱金融機関がほぼ参加し、振り込みなど銀行間の取引を処理する「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」は、1日に10兆円を超える資金のやりとりを処理している。安全性が高い一方、手数料は長年据え置かれている。銀行の送金手数料の高さは、政府が7月にまとめた成長戦略でも指摘された。
 送金側の負担は3万円未満の場合で117円、3万円以上なら162円。これをベースに銀行は利用客に請求する振込手数料を決める。公正取引委員会は「(コンピューター処理による)実際のコストを大きく上回っている」と指摘。関係者からは「利用客は過大な負担を強いられている」との批判が上がる。
 キャッシュレス決済では少額・高頻度で取引されるケースが多く、手数料の高さは難点だ。決済業者は売上金を飲食店や小売店の口座に振り込む際に生じた手数料を転嫁するため、店の負担は大きい。入金回数を制限する業者もあり、小規模店は資金繰り悪化を警戒。国内でキャッシュレス決済が広がりを欠く一因になっている。
 全銀システムの手数料について、銀行側は金融庁などと協議し、来年初めまでには結論を出したい考え。手数料を受け取るケースが多い地方銀行にとっては減収要因で、大幅な引き下げに慎重な意見もある。ただ、政府の旗振りもあり、対応を迫られそうだ。
 全銀システムにスマートフォン決済業者などノンバンクが参加しやすくすることで、銀行に支払う上乗せコストをなくそうとする動きもある。その場合でも参加を促すには費用低減が不可欠だ。
 こうした中、三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそななど大手5行は8月上旬、全銀システムを経由せず、安価にスマホ決済アプリなどに送金できる共通インフラ整備を進めると発表した。こうした試みが広がれば、手数料の引き下げが一段と加速しそうだ。 

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