財政黒字化、29年度以降=コロナ禍で2年先延ばし―内閣府試算 2020年07月31日

 内閣府は31日、政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に中長期の経済財政試算を提出した。財政健全化の目安となる国と地方の基礎的財政収支(PB)が黒字化する時期は、名目3%以上の高い経済成長が実現するケースでも2029年度になる。今年1月の前回試算では27年度としていたが、新型コロナウイルスによる経済への悪影響で2年先に延び、政府が目標とする25年度の黒字化は一段と困難になった。
 安倍首相は諮問会議で「試算で示された経済財政状況は厳しいものだ」と指摘。その上で「経済再生なくして財政健全化なしの基本方針の下で、経済・財政一体改革の着実な推進に努める」と述べた。
 PBは政策経費を借金に依存せず、税収でどれだけ賄えているかを示す指標。20年度は新型コロナ対策で大型補正予算を編成し、景気悪化で税収も落ち込むため、67兆5000億円と大幅な赤字に陥る。その後は改善に向かうものの、25年度の赤字額は7兆3000億円と、前回試算(3兆6000億円)の2倍に拡大する見通し。29年度の黒字額は3000億円と小幅にとどまる。
 今回の試算には、社会保障費などの歳出改革を織り込んでいない。内閣府は、21年度以降に歳出改革を進めれば26年度のPB黒字化が視野に入ると説明する。民需主導の経済成長などを前提とすれば、「まだ25年度の黒字化を目指すことができる」(幹部)として、現時点では目標を見直さない構えだ。
 名目成長率が1%台前半で推移する「ベースラインケース」では、25年度の赤字幅は12兆6000億円に達し、試算最終年度の29年度でも黒字化は実現しない。新型コロナの感染第2波が起これば、財政再建がさらに遅れる恐れもある。 

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経済財政諮問会議で発言する安倍晋三首相(左)=31日午後、首相官邸
経済財政諮問会議で発言する安倍晋三首相(左)=31日午後、首相官邸

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