収益減でも配当維持=地銀の8割、金融庁は疑問視 2020年06月15日

 地方銀行の約8割が2021年3月期の年間配当予想を維持することが15日、分かった。低金利の長期化に加え、新型コロナウイルス流行で取引先の業績は悪化し、地銀の収益は急速に低下している。それでも株主還元を手厚くする姿勢について、金融庁は「(配当抑制で)余力を残し、地元企業を支援すべきではないか」(幹部)と疑問を呈している。
 時事通信が全国の地銀全86社の決算を分析した。21年3月期の配当見通しを公表した82社のうち、約8割に当たる63社が維持、4社が増配(記念配当を含む)を予定する。
 一方、全体の7割弱に当たる56社が純利益の減少を見込むが、減配予想は14社にとどまった。 
 20年3月期も年間配当金を公表した85社の7割が維持・増配の方針。低金利や少子高齢化に伴う市場縮小で収益が悪化し、地銀全体の連結純利益はこの5年で3割減少したが、配当額は約2000億円と横ばいで推移している。
 コロナ禍に苦しむ地元企業と地域経済を支えるには、収益力の強化と資本の厚みが不可欠。金融庁は「将来を見据えた投資や、企業の資金繰り支援には銀行の資本余力が必要」(幹部)として、今後経営陣との対話を通じ、取引先支援や株主還元などのバランスを問う考えだ。
 ただ、配当を減らすと「株価が下がり、風評が立つ」(地銀関係者)との懸念は根強い。配当維持にこだわる地銀について、大和証券の矢野貴裕アナリストは「コロナ禍でも財務に余力があることを示す意図もあるのではないか」と指摘する。

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