トランプ氏「白人偏重政治」に危機=逆風の米大統領選へ―11月にバイデン氏と対決 2020年06月15日

 【ワシントン時事】11月の米大統領選で再選を期す共和党のトランプ大統領(74)は20日、選挙集会を再開し、民主党のバイデン前副大統領(77)との対決に向けて本格始動する。新型コロナウイルスの感染拡大や、人種差別抗議デモへの強硬姿勢に世論は反発。軍との不和も浮き彫りになるなど、白人中心の4割の保守支持層に依存したトランプ氏の再選戦略は、危うい状況を迎えている。
 ◇無党派層離れ
 「多くのアフリカ系の友人や支持者の要望を尊重することにした」。トランプ氏は12日、当初は奴隷解放記念日の19日に計画した集会の開催を発表から丸2日で断念すると、こう釈明した。抗議デモに対して連邦軍の出動に言及するなど攻撃的な発信を続けてきた中で、「まれに見る後退」と関係者を驚かせた。
 トランプ氏は就任以来、移民問題などで国内の分断をあおりながら「偉大な米国」を掲げ、白人の中核支持層にアピールしてきた。こうした岩盤支持層は今も健在だが、無党派層の離反が顕著になっている。
 ギャラップ社が10日発表した調査によると、先月まで同水準だった無党派層の支持と不支持は、今月は不支持が56%と、支持の39%を圧倒。モンマス大調査では「米国が間違った方向に進んでいる」と考える人は過去8年間で最高の74%となり、現状への不満は選挙で人心一新を求める声につながりかねない。
 さらに、新型コロナをめぐっては、民主党支持者が多いニューヨークなど東海岸の都市の感染が減少傾向にある一方、早期に経済を再開させたテキサス州など南部の共和党地盤で深刻さを増してきた。8月以降に本格化が予測される「第2波」は、経済再開に前のめりのトランプ氏にとって爆弾になる恐れがある。
 ◇「積極的支持」課題
 「トランプ氏は新型コロナを忘れたかもしれないが、ウイルスは私たちを忘れていない」。3月以降、自宅地下室にこもってインターネットで選挙運動を続けてきたバイデン氏は11日、激戦州のペンシルベニア州を訪問。経済優先のトランプ氏を批判し、「第2波」を防ぐ検査態勢の充実を訴えた。
 人種問題で分断を深めたとの批判が強いトランプ氏に対し、バイデン氏は「傷を癒やす指導者」を自任。白人警察官に首を圧迫されて命を奪われた黒人男性ジョージ・フロイドさんの9日の葬儀ではビデオメッセージを寄せ、遺族や黒人社会の心情を思いやった。
 ただ、現状では「敵失頼み」は否めない。CNNの世論調査では、55%が「バイデン氏に投票する」と答えたが、その6割が「トランプ氏への批判」を理由に挙げ、バイデン氏への積極的支持は4割に満たない。
 大統領選はごく限られた州の結果が全体の勝敗を左右するため、全国の世論調査だけで結果を予測するのは難しい。4年前にトランプ氏の逆転勝利を決定づけたミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州は、いずれも得票率差が1ポイント以内だった。接戦州でどれだけの支持者を投票に動員できるかが勝敗の鍵を握る。
 「『物言わぬ多数派』はかつてなく強くなっている」。トランプ氏は14日、ツイッターでこう主張し、抗議デモや世論調査では測れない支持の厚さに自信を示した。 

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