米景気後退、再選シナリオに影=「第2波」で波乱含み―トランプ氏 2020年06月15日

 【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トランプ米大統領が看板に掲げてきた「高成長」「低失業率」「株高」が総崩れになっている。近年の景気後退時は現職大統領が再選に失敗しており、トランプ氏は早期回復へ経済再開を急ぐ。だが感染「第2波」のリスクが浮上。先行きは波乱含みだ。
 「史上最大の復活劇だ」。トランプ氏は5月の失業率が13.3%と、戦後最悪の4月(14.7%)から改善したことを受け、経済再開の戦略を自賛した。しかし最近は、全米50州のうち半数近い州で感染者が再び増加し、一部で外出規制の緩和にブレーキがかかり始めた。
 全米経済研究所は景気が2月に後退局面に入ったと認定したが、トランプ氏は11月の大統領選を見据え、今年後半以降の「V字回復」に望みをつなぐ。新たな現金給付、大型減税、インフラ整備をぶち上げ、「来年はかつてない最高の年になる」と楽観論を振りまいている。
 ただ連邦準備制度理事会(FRB)や民間エコノミストは「雇用の本格回復は数年先」(パウエル議長)などと先行きに慎重だ。トランプ氏が追加策に繰り返し言及するのは、感染初期対応や黒人差別抗議デモへの強硬姿勢が招いた支持率の急降下に対する焦りとも言える。
 第2次大戦後の大統領選で2期目を目指して失敗した現職は3人。いずれも任期中に景気後退に陥った。直近では、ブッシュ氏(父)が湾岸戦争不況で1992年に敗北。第2次石油危機の最中だった80年にはカーター氏が再選を逃した。米ギャラップ社の調査で両氏の支持率は選挙前に30%台と低迷。トランプ氏も最新で39%と「危険水域」に沈んだ。
 ただ、トランプ氏に挑む民主党のバイデン前副大統領も現職を圧倒するほどの勢いはない。同党関係者は「感染第2波はタイミング次第でトランプ氏の致命傷になる」と分析。犠牲になりやすい黒人の無保険者や不法移民など「社会保障弱者」に焦点を当てつつ、敵失の機会をうかがっている。 

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