「下請けいじめ」防止へ行動=リーマン時横行、コロナで再燃も―大企業に要請・政府 2020年06月10日

 政府は10日、大企業に対し、新型コロナウイルス流行で苦しむ下請け中小企業への負担のしわ寄せを防ぐ行動宣言の策定を要請した。中小企業庁によると、2008年のリーマン・ショック時に横行し、その後の数年にわたり中小企業の生産性低下を招いた。コロナ禍で利益を確保するため「下請けいじめ」が再燃すれば、雇用の7割を支える中小企業の経営に深刻な打撃となる。
 行動宣言では、下請け企業の適正な利益を考慮した取引価格とすることや、IT化の支援など産業界全体で「共存共栄」を目指す方針を明示。経営トップが宣言に署名することで実効性を持たせるのが特徴だ。5月18日の官民会議で政府と産業界が取り組むことで合意しており、今年度下期の取引条件が固まる8月までの策定を目指す。 
 バブル崩壊後のデフレ進行とともに納入部品の大幅な値引きを強いる買いたたきなどが顕在化。中企庁によると、2000年以降の製造業では、中小企業の労働者1人当たりの成果を示す労働生産性の上昇率は、大企業のしわ寄せの影響を考慮しない実質ベースで4%程度と、大手と遜色ない。ただ、納入先から押し付けられた値引きを差し引いた名目ベースの伸びは低水準にとどまる。
 日本の中小企業は国際的に見て生産性が低いとされる。これに対し、日本商工会議所の三村明夫会頭は「過去20年間、中小企業は年3~4%の生産性向上を続けてきた」と説明。その上で「販売価格が適正でなかったため利益が伸びなかった」と指摘する。
 政府も取引実態を調査する「下請Gメン」を配置し、この2~3年は改善の兆しも見られた。だが、コロナ禍が広がる足元では「資金繰り悪化を理由に親会社が支払い先延ばしを要求してきた」(自動車部品会社)といった声も増えている。
 下請け企業の満足度調査といった取り組みで知られる石川県の建築資材会社コマニーの塚本幹雄会長は「宣言だけでなく、チェック体制の構築が大事だ」と話す。

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「下請けいじめ」を防ぐための官民会議に出席する梶山弘志経済産業相(奥)と前田泰宏・中小企業庁長官(手前)=5月18日、東京都千代田区
「下請けいじめ」を防ぐための官民会議に出席する梶山弘志経済産業相(奥)と前田泰宏・中小企業庁長官(手前)=5月18日、東京都千代田区

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