外資規制を強化=残る日本株離れ懸念―改正外為法 2020年06月07日

 日本の上場企業に対する外国人投資家の出資規制が7日、強化された。改正外為法に基づく措置で、海外への技術流出を防ぎ、国の安全保障が脅かされる事態を防ぐのが狙いだ。ただ適用基準は透明性を欠き、海外勢の日本株投資を阻害するとの懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
 外国人による出資規制強化は、米国やドイツ、英国などで先行。日本でも昨年11月に改正外為法が成立した。武器や航空機の製造、原子力事業などの企業に外国人が出資する際、日本政府に対して事前に届け出る基準を出資比率10%以上から1%以上に厳格化する。
 上場する約3800社のうち、事前届け出が必要な企業に指定されたのは2111社。安全保障に悪影響を及ぼす恐れがあれば、国は投資の中止や変更を勧告・命令する。東証1部売買代金の7割を占める海外投資家の日本株離れを招くとの懸念を踏まえ、指定企業でも届け出免除を受けられる制度にしている。
 取締役会に参加しないなど、届け出免除の要件が厳しい「コア業種」として、三菱重工業やトヨタ自動車、東京電力ホールディングスなど558社を指定。今後は新型コロナウイルス感染拡大を受け、人工呼吸器などの医療機器や感染症対策の医薬品を手掛ける企業も対象に加える。コア業種以外の1553社は免除要件を比較的緩くした。
 ただコア業種として、安全保障との関係が不明瞭な出前館や極楽湯ホールディングスなどが入った一方、3大銀行グループでは三菱UFJフィナンシャル・グループが外れた。指定リストを作成した財務省は「上場企業に送ったアンケートや定款、有価証券報告書を踏まえて決めた」と説明するが、個別の判断理由ははっきりしない。
 岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは「何によって(指定に)差が付くのかなかなか分からず、投資を控える理由にもなり得る。もう少し透明性を確保すべきだ」と話す。 

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