FTA交渉、続行か決裂か=英EU首脳が判断へ 2020年06月06日

 【ロンドン時事】1月末に欧州連合(EU)を離脱した英国とEUは、自由貿易協定(FTA)締結交渉の節目となる第4回会合が5日に終了したことを受け、ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長らで月内に中間評価を実施する。EUからの自主独立を重視する英国と、英国を自らの影響下にとどめておきたいEUの溝は深く、両首脳は交渉続行か決裂かの判断を迫られる。
 「大きな進展はなかったというのが真実だ」。EUのバルニエ首席交渉官は5日の記者会見で、会合を何度重ねても行き詰まりを打開できない事態に失望を表明した。
 交渉の主な懸案は、英EU双方の企業が公平な条件で競争するための枠組み整備や、魚種が豊富な英沖合でのEUの漁業権の在り方。ただ、突き詰めると、焦点はいずれも離脱に伴う英国の「主権回復」(フロスト英首席交渉官)と言える。現状維持の受け入れを求めるEUに対し、英国が「今後のルールは自ら決める」と反発する構図だ。
 互いに主張をぶつけ合い対立する英EUだが、今秋の決着を目指す点では一致している。このため、中間評価では交渉続行を決める公算が大きい。もっとも、英政府は2月にまとめた指針で、「合意の大まかな輪郭」が6月までに見えてこなければ、EUとの物別れも辞さない強硬姿勢を示した。妥結の糸口を見いだせない現状では、決裂リスクはゼロではない。 
 一方、年末まで英国をEU加盟国並みに扱う「移行期間」を延長すれば、実質10月末の交渉期限を延ばすことができる。
 しかし、ジョンソン首相率いる与党保守党は「移行期間の延長拒否」をマニフェスト(政権公約)に掲げて昨年12月の総選挙に大勝した。交渉期限を延ばしても懸案は解消されない上、移行期間後の「完全離脱」実現が先送りされるマイナス面もあり、「英政府がEUに延長を要請することはない」(EU外交筋)とみられている。

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