緊急事態、全面解除=首相「新たな日常目指す」―首都圏4都県・北海道も「収束」 2020年05月25日

 政府は25日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道の5都道県で続いていた緊急事態宣言について、月末の期限を待たず解除した。安倍晋三首相は記者会見し、「次なるステージへ力強い一歩を踏み出す。目指すは新たな日常をつくり上げることだ」と述べ、感染防止策を講じつつ社会経済活動を段階的に本格化させるよう、国民に協力を呼び掛けた。
 宣言の全面解除は約1カ月半ぶり。首相は解除理由について「世界的にも極めて厳しいレベルで定めた基準をクリアしたと判断した」と説明。その上で「わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」と述べ、外出自粛要請などに応じてきた国民に謝意を示した。
 首相は無観客で来月開幕するプロ野球に触れつつ、「これからは感染リスクをコントロールしながら、どうすれば実施できるかという発想が重要だ」と指摘。「最悪の場合、2度目の緊急事態宣言の可能性もある」としながらも、「希望は見えてきた。出口は視野に入っている」と強調した。
 首相は感染者との濃厚接触の可能性を利用者に通知するスマートフォン向けアプリの運用を6月中旬をめどに始める方針を明らかにし、国民に活用を呼び掛けた。
 この後の対策本部では、首相が緊急事態の解除を宣言。基本的対処方針も改定された。対処方針には、5月末以降、おおむね3週間ごとに感染状況を確認しながら、外出自粛、イベント自粛、休業などの要請を段階的に緩和すると明記した。
 解除の決定に先立って、政府は感染症学者や経済学者でつくる基本的対処方針等諮問委員会に解除方針を諮り、了承された。ただ、東京で24日に新規感染者14人が確認され、神奈川と北海道では直近1週間の10万人当たりの感染者が目安の0.5人を下回っていないことから、諮問委の尾身茂会長は席上、状況を注視するよう政府に求めた。
 この後、西村康稔経済再生担当相が衆参両院の議院運営委員会に解除を事前報告し、感染が再び拡大する兆しが見えた場合は、1回目よりも柔軟に緊急事態宣言を再発令する方針を示した。 
 緊急事態宣言は4月7日に7都府県を対象に発令され、16日に全国に拡大された。政府は5月4日、全国を対象にしたまま期限を31日まで延長した後、14日に39県、21日に関西3府県と段階的に解除していた。

◇安倍首相会見ポイント
 一、流行は収束、緊急事態宣言を全面解除
 一、世界的に厳しい解除基準をクリア
 一、目指すは新たな日常
 一、感染リスクを考慮しつつ経済活動
 一、27日に第2次補正予算案を閣議決定
 一、事業規模は1次と合わせ200兆円超
 一、6月中旬に接触確認アプリの運用開始

その他の写真

緊急事態宣言解除のニュースが流れる夜の東京・歌舞伎町=25日午後、東京都新宿区
緊急事態宣言解除のニュースが流れる夜の東京・歌舞伎町=25日午後、東京都新宿区
緊急事態宣言の全面解除に先立ち、記者会見する安倍晋三首相(右)と基本的対処方針等諮問委員会の尾身茂会長=25日午後、首相官邸
緊急事態宣言の全面解除に先立ち、記者会見する安倍晋三首相(右)と基本的対処方針等諮問委員会の尾身茂会長=25日午後、首相官邸

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