中国、成長目標公表見送り=コロナ克服も経済打撃―香港治安法制審議へ・全人代開幕 2020年05月22日

 【北京時事】新型コロナウイルスの感染拡大により延期されていた中国の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第3回会議が22日午前(日本時間同)、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相が政府活動報告を行い、新型コロナについて「対策は大きな戦略的成果を収めている」と表明した。ただ、新型コロナによる経済への打撃は深刻で、今年の経済成長目標の公表は見送られた。
 成長目標は経済政策立案の基盤となる重要指針で、公表見送りは異例だ。李首相は「新型コロナと経済・貿易の情勢は不確定性が非常に高い」と指摘した。今年1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.8%減と初のマイナス成長を記録。経済活動はおおむね再開されたものの、消費の不振から4~6月期も縮小が見込まれるなど、厳しい状況が続いている。
 李首相は「感染症対策特別国債を1兆元(約15兆円)発行する」と言明。影響の深刻な中小・零細企業を中心に減税や社会保険料の引き下げを継続し、次世代通信規格「5G」網整備などの成長分野に重点を置いたインフラ投資を増やす方針だ。
 一方、李首相は昨年から反政府抗議活動が続く香港について「国家安全を守るための法制度・執行メカニズムを確立しなければならない」と強調。28日までの会期を通じて、国家に対する反逆行為の禁止を定めた国家安全法を香港に適用することが審議される見通しで、香港の「一国二制度」の形骸化が一層進むことは避けられそうにない。
 また、今年の国防予算は前年比6.6%増の1兆2680億500万元(約19兆2000億円)になった。経済が落ち込む状況でも前年(7.5%増)に近い伸びを確保した。李首相は「科学技術による軍隊強化」を訴え、習近平国家主席が掲げる「強軍」路線の継続を強調した。
 全人代は1998年以降、毎年3月5日に開幕してきた。今年は新型コロナの感染拡大を受けて延期を決定。22日の会議冒頭では、新型コロナで亡くなった人々に黙とうがささげられた。5月に入り吉林省などで集団感染が発生し、感染第2波が懸念されており、李首相は「新型コロナは今なお終息していない」と述べた。 

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22日、北京の人民大会堂で開幕した中国全国人民代表大会(全人代)に出席した習近平国家主席(AFP時事)
22日、北京の人民大会堂で開幕した中国全国人民代表大会(全人代)に出席した習近平国家主席(AFP時事)

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