大手賃上げ、14年以降で最低=先行きコロナ影響―経団連集計 2020年05月21日

 経団連は21日、大手企業の2020年春闘妥結状況(第1回集計)を発表した。定期昇給を含む月例賃金の引き上げ率は2.17%(7297円)で、政府が賃上げを要請する「官製春闘」が始まった14年以降で最低となった。米中対立による世界経済の減速で自動車や鉄鋼など輸出産業が低迷。新型コロナウイルスの影響も今後本格化するとみられ、賃上げ相場は転機を迎えた。
 東証1部上場の大手企業などが対象で、今回は回答があった15業種86社の組合員平均を集計した。最終集計は7月に公表する予定。
 賃上げ率は11業種で前年水準を下回った。日本製鉄など大手3社が基本給を底上げするベースアップを見送った鉄鋼は1.30%と、前年比で伸びが0.47ポイント鈍化。自動車も2.27%と、同0.34ポイント前年を下回った。 
 ホテル(2.60%)や商業(2.73%)など4業種が前年水準を上回ったが、これらの業種は足元で新型コロナによる渡航制限や外出自粛で深刻な打撃を受けている。
 新型コロナの影響について、経団連は「妥結内容だけ見れば大きくは出ていない」(労働政策本部)と指摘。労使で合意した賃上げが凍結される可能性については、東日本大震災など過去の例を踏まえ「1度約束したことは、そう簡単に改められない」(同)との見方を示した。一方、業績連動型の賞与などを採用する企業を中心に夏の賞与以降に影響が顕在化するとみて警戒を強めている。
 連合の神津里季生会長も、21日の定例記者会見で「先行きには相当影響がある」との見解を示した。

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