燃え上がる「原油価格戦争」=協調減産、3月末打ち切り 2020年03月30日

 【ロンドン時事】石油輸出国機構(OPEC)の加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」の協調減産が3月末で打ち切られる。産油国は続々と増産を表明し、取引価格も引き下げて市場シェアを奪う「原油価格戦争」に乗り出した。原油価格の暴落を招き、新型コロナウイルスの感染拡大で混乱する金融市場に「火に油を注ぐ」結果となっている。
 ◇相次ぐ増産表明
 「きょうという日を後悔するだろう」。6日にOPECプラスの閣僚級会合でサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が非加盟国の閣僚にこうたんかを切ったのは、いわば「宣戦布告」だった。この日サウジと非加盟国のロシアによる減産協議が決裂し、協調体制が事実上崩壊した。
 サウジは原油価格を維持する戦略を捨て、最大限の増産を表明。同時に売値を大幅に引き下げた。追加減産を拒否したロシアに対する「懲罰」に加え、OPECプラスの減産に乗じてシェアを拡大してきた米国のシェールオイル開発にブレーキをかける狙いがある。
 ロシアもすぐさま大幅増産を表明し応戦。アラブ首長国連邦(UAE)も増産に乗り出す姿勢を打ち出し、産油国は続々と価格戦争に参戦した。
 ◇年初から6割超下落
 新型コロナの拡大で世界の原油需要が冷え込む中、過剰供給に懸念が強まり、原油価格は暴落した。代表的な指標の米WTI先物は年初から60%余り下落し、一時約18年ぶりに1バレル=20ドルを割り込んだ。
 欧米石油大手の株価も急落。産油国の政府系ファンドが株式などさまざまな保有資産の売却を急いだとされ、金融市場の混乱に拍車を掛けた。
 「逆石油ショック」とも言うべき事態に、北米や南米などの原油生産コストの高い国では、原油価格が損益分岐点を下回る。開発計画は見直しを迫られ、北米では石油掘削に使う機械の稼働が急減。これらの国では今後生産が落ち込む見通しで、歳入を原油に頼る一部の国は財政が窮迫しそうだ。
 一方、1バレル=10ドルでも利益が出るとされるサウジは、シェア拡大の恩恵を受ける見通しだ。英調査会社キャピタル・エコノミクスは中東・北アフリカの今年の経済成長率予想を修正し、域内各国が軒並みマイナス成長に転落するが、サウジだけは成長を加速させると予測した。
 OPECプラスは6月に次回会合を予定しているが、サウジとロシアの関係修復のめどは立たない。トランプ米大統領が「しかるべき時に関与するつもりだ」と介入を示唆するなど、今後の議論には不透明感が漂っている。 

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サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相=6日、ウィーン(AFP時事)
サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相=6日、ウィーン(AFP時事)

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