米失業率、大恐慌並みに悪化か=与野党対立も足かせ―新型コロナ 2020年03月24日

 【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染拡大で米国経済の停滞が長引き、4~6月期の米失業率が1930年代の世界恐慌と同程度まで悪化するとの見方が出てきた。秋の大統領選をにらんだ与野党対立で大型経済対策の成立も遅れ、景気不安が一段と強まっている。けん引役不在のまま世界経済の視界不良が続けば、2020年はマイナス成長が避けられない情勢だ。
 「米失業率は最悪の場合30%」。セントルイス地区連銀のブラード総裁は4~6月期の米経済について警鐘を鳴らした。2月には50年ぶりの低失業率(3.5%)を維持していたが、工場の操業停止や店舗の閉鎖で企業によるレイオフ(一時解雇)が急増。速やかな政府支援がなければ、失業率は1933年に記録した24.9%を上回る恐れもある。
 実際、失業保険の申請が殺到している。米労働省が集計した全米の申請件数は今月14日までの1週間で約28万件と2年半ぶりの高水準だった。米金融大手ゴールドマン・サックスは26日に発表される次回の件数が前週比8倍の約225万件になると予測。第2次オイルショックの影響が残る82年10月に計上した過去最多の週間申請件数(69万5000件)を超えるとみられる。
 共和党のトランプ大統領は2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策を提案したが与野党の調整は難航し、反発した野党民主党は23日に2兆5000億ドルの独自案をまとめた。米商工会議所は「採決が遅れるごとに企業の倒産が増えて失業者も増える」と批判。国際通貨基金(IMF)も「今年の世界経済はマイナス成長に陥る」と指摘し、景気後退入りの瀬戸際にいると警告を発した。
 国際労働機関(ILO)は今回の危機で世界全体の失業者が最大約2500万人に達し、リーマン・ショック当時の2200万人を上回る可能性があると分析する。ILOのライダー事務局長は「雇用や経済を脅かす危機は社会に多大な影響を与える」と語り、米国や日本をはじめとする先進国に迅速な財政出動を促している。 

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