「宇宙」活用技術に存在感=人工衛星で作戦指揮や偵察―抗戦続けるウクライナ 2023年02月11日 14時24分

高速衛星通信サービス「スターリンク」関連機器の横に立つウクライナ兵=2022年10月、南部ミコライウ郊外(AFP時事)
高速衛星通信サービス「スターリンク」関連機器の横に立つウクライナ兵=2022年10月、南部ミコライウ郊外(AFP時事)

 【シリコンバレー時事】ロシアによる侵攻に約1年にわたり徹底抗戦を続けるウクライナで、宇宙空間を活用した技術の存在感が増している。同国は地上インフラが破壊される中、人工衛星による通信サービスを使い作戦を指揮。衛星から送られる高精細画像も偵察に利用している。
 「21世紀の紛争における画像情報の影響力が示された」。宇宙産業の分析を手掛ける米キルティ・アナリティクスは今回の紛争を契機に、衛星からの高精細な画像の重要性が広く認識されたと指摘した。
 人口や経済規模で勝るロシアを相手にウクライナが抗戦を続けられるのは、米国から提供される衛星画像などでロシア軍の動きをつかみ作戦を練っているためとされる。画像には実際の様子が写り、ロシア側の情報操作を阻む効果もあった。
 こうした成果もあり、景気減速懸念のあおりで新興宇宙企業への投資が低調となる中でも、安全保障に絡んだ宇宙関連技術の需要は底堅い。米国防総省の国家偵察局は昨年、最長10年間にわたり数十億ドルで衛星画像を購入すると発表した。
 ウクライナの紛争で存在感を放つ宇宙関連企業が、実業家イーロン・マスク氏率いるスペースXだ。ウクライナの要請を受け、高速衛星通信サービス「スターリンク」を侵攻開始直後に提供したことで知られる。
 同社の衛星通信サービスは、ロシアからサイバー攻撃を受けて地上インフラも破壊される中、命令を伝達するのに使われた。ウクライナ側が支援を求め、ロシア糾弾の国際世論を醸成するのにも一役買った。スペースXは昨年、情報機関向けの通信サービスを発表するなど勢いづいている。
 一方、昨秋にはマスク氏が費用負担の重さに言及し、ウクライナに対してサービス提供の中断をほのめかしたことで、混乱を招いた。企業の経営判断で、戦況が変わり得るリスクもはらんでいる実態が浮き彫りとなった。 

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