ガザ停戦、任期内困難に=レームダックで影響力低下―米大統領 2024年10月06日 14時16分
【ワシントン時事】パレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦を目指してきたバイデン米大統領。だが、来年1月の任期終了までの合意実現は困難になりつつある。再選を断念し、政権のレームダック(死に体)化が加速。停戦交渉をまとめ上げる余力はほとんど残されていない。
「米国がある限り、決してあなた方を孤独にはさせない」。バイデン氏は昨年10月、ハマスの奇襲直後にイスラエルを訪問し、連帯を示した。各国が国連安全保障理事会で即時停戦を盛り込んだ決議の採択を求める中、米国は4回にわたり拒否権を行使し、イスラエル支持を鮮明にした。
11月の米大統領選での再選を目指したバイデン氏にとって、ユダヤ票の取り込みは不可欠だった。だが、ガザの人道危機が深刻化し、若年層を中心に反イスラエル感情が悪化すると難しいかじ取りを迫られた。
バイデン政権は3月に即時停戦を求める国連安保理決議に拒否権を行使せず、採択を容認。イスラエルへの弾薬輸送も一部停止し、外交・軍事両面で圧力を強めた。5月末にはイスラエル案として、新たな停戦案を発表。先進7カ国や安保理の支持も取り付け、合意実現に向けてなりふり構わぬ姿勢を見せた。
しかし、6月27日のトランプ前大統領とのテレビ討論を機に目算が狂い始めた。討論で精彩を欠いたバイデン氏は選挙戦継続を断念。自ら8月にイスラエルとハマス双方の「溝を埋める提案」を行ったものの、停戦交渉は進展しなかった。
ブッシュ(子)政権で大統領副補佐官(国家安保担当)を務めたエリオット・エイブラムス氏は「討論会を経て、バイデン氏はあらゆるところで影響力を失った」と分析する。紛争拡大を危惧する米国をよそに、イスラエルのネタニヤフ政権は9月、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘を激化させ、後ろ盾イランとの緊張も高まっている。
バイデン氏は4日、ホワイトハウスで記者会見し、米大統領選までイスラエルは停戦合意しないのではと問われると「私以上にイスラエルを支援した政権はない」と強調。「ビビ(ネタニヤフ首相の愛称)はそのことを覚えておくべきだ」とけん制してみせたが、ネタニヤフ氏に攻撃の手を緩める気配はない。