軍事圧力で人質奪還狙う=イスラエル、ガザ南部に地上侵攻―人口密集で作戦「より困難」 2023年12月04日 19時30分

3日、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ境界付近に展開するイスラエル軍の戦車(AFP時事)
3日、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ境界付近に展開するイスラエル軍の戦車(AFP時事)

 【エルサレム時事】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ南部への地上侵攻に踏み切った背景には、イスラム組織ハマスの壊滅に向けて掃討作戦を進めるとともに、ハマスを追い詰め、中断した人質解放を再開させる狙いがあるとみられる。一方、北部への地上侵攻を経て多くのガザ住民が南部に避難しており、人口密集地域での戦闘となれば被害拡大は必至。国際社会から厳しい視線が注がれる。
 「大規模な軍事的圧力と、絶え間ない外交努力で人質解放を成し遂げた」。イスラエルのネタニヤフ首相は2日の記者会見でそう成果を誇示した。その上で、ハマス打倒と人質奪還といった目標について「地上侵攻以外に達成するすべはない」と強調した。
 イスラエル軍は10月にガザ北部に侵攻し、ハマスの拠点を制圧。その後双方は戦闘休止で合意に至り、収監するパレスチナ人と人質の身柄を交換した。しかし、ガザに依然130人以上の人質が残された状況で合意期限が切れ、協議は中断。ハマスと再び交渉を進めるため、イスラエルは軍事力を背景に人質を解放させた「成功体験」をなぞろうとしているようだ。
 政府高官から、カタールなど国外のハマス幹部の暗殺を示唆する発言が相次いでいるのも、精神的にハマスを追い詰める狙いがありそうだ。
 こうした中、対外情報機関モサドの元長官は、イスラエルのメディアに、避難民が押し寄せ人口が密集している南部は「住民退避がより複雑になる」と指摘。米国など国際社会からの民間人保護を求める圧力もあるため、イスラエルの作戦実行は「より困難」な状況にあるとの見方を示した。
 民間人を保護する策として軍は細かい区画を示したガザの地図を基に住民に退避を指示している。国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、軍は3日、南部ハンユニスの約2割を退避地域に指定。この地域にはもともと約11万7000人が暮らし、北部から逃れた約5万人が避難所に身を寄せるという。大規模な退避が可能かは不透明だ。
 退避先とされる地域でも空爆が行われている。策を講じても実効性がなければ、民間人が多く巻き込まれるのは確実だ。
 また、ガザへの人道支援物資搬入は、エジプトとの境界にあるガザ南部の検問所が唯一の窓口。主戦場が南部に移れば、人道状況の一層の悪化も予想される。 

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