豪先住民、改憲巡り3極化=主流は賛成、左右に反対論 2023年09月23日 15時27分

オーストラリアのアルバニージー首相=9日、ニューデリー(EPA時事)
オーストラリアのアルバニージー首相=9日、ニューデリー(EPA時事)

 【シドニー時事】オーストラリアの先住民の地位確立に向けた憲法改正案を巡り、当事者の先住民の立場が三つの極に分かれている。非先住民との格差是正を求めて改憲に賛成する意見が主流。しかし、右派からは「非先住民と敵対すべきではない」、左派からは「改憲案に実効性がない」と、全く異なる角度の反対論が上がり、各極の先住民政治家もばらばらの主張を展開している。
 中道左派のアルバニージー労働党政権は、先住民のアボリジニとトレス海峡諸島民を「最初の豪州人」と認め、議会や政府に意見具申できる代表機関を設置する改憲案を提示。10月14日に国民投票が行われる。
 代表機関は先住民の団体が2017年に建議したものだ。バーニー先住民担当相は英国による植民地支配時代の先住民迫害を踏まえ、「過去の不正義を正す絶好の機会だ」と意義を強調する。
 これに対し、野党・保守連合「影の先住民担当相」のプライス上院議員は今月の講演で「植民地統治は良い結果を残した。水道が通り、民主主義制度もある。今、悪影響はない」と発言。「先住民を被害者扱いするのは反対だ」と訴えた。保守層からは「白人が口にしづらいことをよく言った」と評価された一方、改憲賛成派からは「白人以上に白人至上主義的だ」と批判を浴びた。
 一方、無所属で最左派のソープ上院議員は「代表機関は無力で、何も変わらない。改憲案は進歩の偽装だ」と酷評。ニュージーランドで先住民マオリと英国が結んだ条約と同様のものを豪州にも導入し、先住民の権利を強力に保護すべきだと主張している。
 シドニー・モーニング・ヘラルド紙の世論調査では、改憲反対が57%で、賛成の43%を上回った。先住民の意見が割れていることも支持低下の一因と言えそうだ。 

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オーストラリアのバーニー先住民担当相=17日、メルボルン(AFP時事)
オーストラリアのバーニー先住民担当相=17日、メルボルン(AFP時事)

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