「危険なたこ糸」被害絶えず=使用禁止でも死者、野鳥も犠牲―インド 2023年04月01日 14時20分

たこ揚げをするインドの男性=1月、北部パンジャブ州アムリツァル(AFP時事)
たこ揚げをするインドの男性=1月、北部パンジャブ州アムリツァル(AFP時事)

 【ニューデリー時事】インドでたこ揚げに用いる鋭利なたこ糸が絡まり、けがをするケースが後を絶たない。危険な糸は6年前から禁止されているが、今年も死者や負傷者が相次いでいる。被害は人間だけでなく野鳥にも及んでいる。
 報道によると、首都ニューデリーで3月28日、30代の女性が公園近くをスクーターで走行中、たこ糸が首に絡まり、20針を縫う重傷を負った。1月には西部グジャラート州で開かれたたこ揚げ祭りで、子供を含む6人がたこ糸で首を切り死亡した。いずれもガラスの粉を付着させた特殊な糸によるものだ。
 インドでは日本の「けんかだこ」のように、たこ同士を戦わせる遊びが人気で、相手のたこを落とすための鋭利な糸が好まれる。環境問題を管轄する裁判所は2017年、危険な糸の使用や製造を全土で禁じる判決を出した。首都圏政府も全面的に禁止しており、違反者には5年以下の禁錮などが科せられる。
 首都の旧市街で雑貨店を営むビプル・グプタさん(38)は「今は綿の糸を売っている。柔らかく、子供にも安全だ」と話す。それでも強い糸を求める人はいて、ネット販売などを通じ違法に流通しているとみられる。警察は3月初旬、首都近郊の製造工場を摘発した。
 地元紙タイムズ・オブ・インディアによれば、首都圏で22年、危険なたこ糸の販売などで立件されたのは271件。当局による摘発強化を背景に、前年の約18倍に急増した。同紙は動物愛護団体関係者の話として、野鳥がたこ糸に絡まり傷を負うケースが、毎年およそ1500件あると伝えている。 

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