リスク管理不備、繰り返し指摘=SVB破綻、預金流出「異常な速さ」―米FRB副議長 2023年03月29日 14時35分

【ニューヨーク時事】米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長(金融規制担当)は28日の米議会上院の公聴会で、経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB)に対し、リスク管理の不備などを繰り返し指摘したが、「(SVBが)必要な行動をとらなかった」と明らかにした。破綻前日には、わずか半日で420億ドル(約5兆5000億円)の預金が流出しており、「異常な速さと規模だった」と振り返った。
バー氏によると、FRBの担当者は2021年11月、SVBに対し、緊急時の資金確保などに関する6項目のリスク管理の不備を伝えた。22年には、内部監査やリスク管理などの弱点を指摘。企業統治の「欠陥」を認定し、M&A(合併・買収)によるノンバンク事業の拡大を禁じた。
今年に入り、FRBスタッフは、理事会幹部にもSVBの問題を報告していた。バー氏もこのときに問題を認識したという。しかし、SVB側の踏み込んだ対応はなく、取り付け騒ぎに発展するまで「SVBの脆弱(ぜいじゃく)性の全容は明らかにならなかった」と話した。
バー氏は、SVB破綻時の様子も証言した。SVBは今月8日、債券の売却損と資本増強計画を公表したことで、財務悪化が表面化し、10日に破綻した。急激な預金流出は9日午後に始まり、数時間後の同日夕方には預金残高の約4分の1に相当する420億ドルが引き出されていた。
FRBは、夜を徹して資金確保策を練ったが、10日朝には、顧客からの要請などを踏まえると、計1000億ドルの流出が見込まれることが判明。最終的に「預金者への支払い義務を果たせない」と判断したという。
SVBは、コロナ禍を受けた大規模金融緩和期に急成長。預金の約9割が預金保険の保護上限を超え、取り付け騒ぎを誘発しやすくなっていた。長期債での運用を増やしたため、利上げ局面での債券価格の下落リスクを多く抱え込んだ。
バー氏は「金利や流動性のリスク管理の不備が破綻をもたらした」と述べ、基本的な態勢整備ができていなかったとの認識を示した。