「中間層再生」道筋見えず=インフレ直撃、格差対策も頓挫―米中間選挙 2022年10月06日 15時18分

インタビューに応じる母親団体「モカ・マムズ」の創設者、シェリー・イングリッシュフィガロさん=9月20日、米メリーランド州ブーイ
インタビューに応じる母親団体「モカ・マムズ」の創設者、シェリー・イングリッシュフィガロさん=9月20日、米メリーランド州ブーイ

 【ワシントン時事】バイデン米大統領は「中間層の再生」を掲げ、2021年1月に就任した。しかし、歴史的な高インフレが中・低所得層を直撃。幅広い社会・福祉政策をそろえ、経済格差の縮小を狙った看板法案も、与党民主党内の反対で事実上頓挫した。中間選挙を1カ月後に控えるが、再生の道筋は見えないままだ。
 ◇「外食しない」
 「住居費に食品、ガソリン、交通費。みんな値上がりした」。米東部メリーランド州ブーイに住むシェリー・イングリッシュフィガロさんは、ため息をついた。
 シェリーさんは軍医の夫と自身の母親、子供3人の6人暮らし。長男は就職しているが、家賃や住宅価格があまりにも高いため、まだ実家住まいだ。娘2人は大学生と高校生。アイススケートやフルートといった習い事にもお金がかかる。そんな中、物価高への自衛策は「とにかく外食しないことだ」という。
 生活費がかさむと、老後や子供の学費に備えた貯蓄に回せる分が減る。シェリーさんは「十分な蓄えがなければ、子供が多額の学生ローンを抱え、世代にわたって富が蓄積されない」と危機感を抱く。
 シェリーさんは25年前、地域で孤立しがちな黒人の母親を支援する団体「モカ・マムズ」を立ち上げた。今では全米で会員約2000人を数える。過去の差別的な扱いの影響もあり、富の蓄積で「黒人は(白人より)2世代遅れている」とみる。
 連邦準備制度理事会(FRB)の調査によると、19年時点で黒人世帯の純資産中央値は2万4100ドル(約350万円)。白人世帯の8分の1程度にとどまる。
 シェリーさんは「インフレが格差を広げる」と懸念。モカ・マムズの会合で、若い母親たちに「日々の暮らしでの節約方法を伝えていく」と話す。
 ◇子育て支援は置き去り
 欧州など他の先進国と比べて社会保障が手薄な米国の貧困率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国で屈指の高さ。こうした中、新型コロナウイルス経済対策の一環で実施された月300ドルの児童税額控除は、21年の子供の貧困率低下に大きく寄与した。だが、この措置の延長が含まれていた大型歳出法案の頓挫で打ち切りとなった。22年に子供の貧困率は再び上昇すると見込まれている。
 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのジャクソン・ガンドール氏は「大型歳出法案は(格差などの)問題の一部を是正し始めるきっかけだった。その『死』は大きな機会喪失だ」と残念がる。
 結局、看板法案は規模を大幅縮小し、気候変動対策を柱とする「インフレ抑制法」に衣替えして何とか成立した。バイデン氏は9月、民主党全国委員会の会合で「米経済を低所得層の底上げと、中間層の拡大からつくり上げたい」と訴えたが、子育て支援などは置き去りにされている。
 公的なセーフティーネット(安全網)は当てにできない。「われわれの社会は家族に優しくない。自力でやらなくては」。シェリーさんは語気を強めた。 

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