「大転換」当事者に聞く=日銀の13年1~6月議事録(1) 2023年07月31日 18時30分

日銀にとって2013年1~6月は、「2%物価目標」を導入し、「量的・質的金融緩和」を開始した金融政策の大転換期だった。当時、リフレ派の支柱として積極緩和を唱えた元副総裁の岩田規久男氏と、目標に反対した元審議委員の木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストに決定の過程を聞いた。
◇消費増税がなければ=岩田規久男元日銀副総裁インタビュー
―資金供給量を2年で2倍に増やす異次元の金融緩和に踏み切った。
前例がなく、効果を事前に正確に想定するのは難しかったが、それまでのように緩和策を小出しにして、逐次投入するのはだめだと分かっていた。米国などの量的緩和策を参考に検討した中で、最大のものに決まった。
―2年で2%の物価上昇を実現する方針を表明した。
期限を2年とはっきりさせ、人々のデフレ心理を転換させる必要があった。日銀が強く約束することで、政策の信頼性を高めることを狙った。
―結局、2年では達成できなかった。
2014年4月の消費税増税が原因だ。消費が打撃を受け、価格転嫁の動きが鈍った。異次元緩和からしばらくは人々の物価感が改善し、円安・株高が進むなどシナリオ通りだった。増税さえなければ2年で物価目標を達成できた可能性が高い。
―異次元緩和の評価は。
緩和を続けた結果、少なくともデフレではない状況を作り出した。日銀も21年の政策点検で、実質GDP(国内総生産)と消費者物価を一定程度押し上げたとの分析結果を公表している。緩和を続けていなければ、日本経済はもっとひどい状況になったはずだ。
―足元、物価が上昇している。
原材料高を企業が価格に転嫁し始め、ある程度賃金が上昇した。人々の物価感も上がってきた。植田和男総裁が緩和を続ければ、2%の物価目標は近いうちに実現できるのではないか。唯一のリスクは増税だ。