円安、企業の想定超える=製造業は恩恵、輸入企業に逆風 2023年06月30日 19時07分

1万円札と100米ドル札(AFP時事)
1万円札と100米ドル札(AFP時事)

 円相場が30日の東京外国為替市場で一時1ドル=145円台に下落し、多くの企業の想定を上回る円安が進行している。輸出が多い製造業では海外売上高の円換算額が増え、収益を押し上げる恩恵が期待できる。一方、輸入が多い企業は原材料などの調達で海外への支払い負担が増し、コスト削減や値上げによる対応を迫られる可能性がある。
 日銀が4月に公表した3月の全国企業短期経済観測調査によると、企業の2023年度の想定為替レートは1ドル=131円72銭だった。足元の円相場はこれと比べ10円以上、円安となっている。
 円安は製造業にとって一般的にはプラスに働く。トヨタ自動車の場合、23年度の想定レートは年度当初の計画で1ドル=125円。1円円安になると、営業利益は450億円増加するという。
 ただ、世界的な生産体制の最適化などで、「為替の変動にニュートラル(中立的)となる事業構造をつくっており、大きな影響はない」(日立製作所)との声もある。「輸入原材料の価格が上がるため、100%プラスとは言えない」(シチズン時計)との見方もあり、事業の構成によって円安の影響はさまざまだ。
 海外から食品などを輸入する企業では、マイナスの影響が大きくなる。ある外食大手は「仕入れコストが上昇するため、メニューの見直しなどで対応していく」と説明。大手百貨店からは、既に輸入ワインなどの価格が上昇していることを踏まえ、「中間層の購買意欲がそがれる可能性がある」と警戒する声も出ている。 

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